日本外科系連合学会誌
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症例報告
術前に消化管穿孔が疑われた腹腔内遊離ガス像を伴う子宮留膿症穿孔による汎発性腹膜炎の1例
船水 尚武中林 幸夫
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2018 年 43 巻 2 号 p. 285-290

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抄録

症例は86歳の女性.前医で1週間持続する発熱に対し,肺炎疑いで入院抗菌薬治療が行われた.解熱せず胸部CTを施行したところ,腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔疑いで当院へ緊急搬送された.画像上,S状結腸に多発する憩室と腸管壁の肥厚,および脂肪織の混濁を認めた.また子宮壁の肥厚,および内部に液体の貯留を認めたが,これは憩室穿孔による二次的変化と考え,術前診断をS状結腸憩室穿孔による子宮穿破とし,緊急手術を施行した.S状結腸は子宮を囲むように癒着し,剝離すると,壊死した子宮壁より大量の膿を認めた.多発憩室を伴うS状結腸に穿孔部位を認めなかった.婦人科医により,子宮留膿症穿孔の診断で子宮腟上部切断術および両側付属器切除術を施行した.術後は敗血症になるも,集学的治療により状態安定し,第18病日に軽快転院となった.子宮留膿症は高齢女性に多く,稀に穿孔性腹膜炎となり得る.本症例のように腹腔内遊離ガスを呈することで,術前に消化管穿孔と診断される報告例も多い.従って,高齢女性における腹腔内遊離ガスを伴う急性腹症の鑑別診断として子宮に炎症所見を伴う場合は,穿孔性子宮留膿症を考慮する必要がある.

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© 2018 日本外科系連合学会
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