日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
症例報告
上行結腸癌に併発し,腫瘍関連症候群との鑑別に苦慮したリウマチ性多発筋痛症の1例
中本 裕紀横田 良一石川 倫啓山田 健司田口 宏一
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 45 巻 2 号 p. 185-191

詳細
抄録

症例は60歳男性.2年前に上行結腸癌,多発肝転移に対して腹腔鏡下回腸人工肛門造設術を施行した.術後化学療法を施行していたが全身状態の低下があり6カ月前にBSCの方針とし,同時期よりオキシコドンの経口内服を開始した.全身の関節痛を主訴に当科受診.疼痛コントロール目的に入院とした.疼痛原因としては腫瘍関連症候群によるものと考えオキシコドンの増量を行ったが,疼痛コントロールは不良であり眠気や呂律の周りにくさが出現した.他疾患併発の可能性を考慮し精査したところ,関節エコーで上腕二頭筋長頭の腱鞘滑膜炎の所見を認め,リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia rheumatic:PMR)Bird診断基準,ACR/EULAR分類を満たしPMRと診断した.プレドニゾロン換算量10mg/日でステロイドを開始したところ,症状の著明な改善を認めオキシコドンの減量に成功し,種々の副作用症状の消失を認めた.その後少量のステロイドを継続し病状は安定している.

悪性腫瘍がある場合,腫瘍関連症候群かその他疾患が併発しているかの判断は難しい.オピオイドの増量だけではQOLを損ねる恐れもあり注意が必要であり,PMRなどの他疾患の併発がないか類推することが肝要と考える.

著者関連情報
© 2020 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top