2020 年 45 巻 2 号 p. 180-184
症例は73歳男性で,以前より左鼠径部の膨隆を自覚していたが,左鼠径ヘルニアとは診断されていなかった.便潜血陽性精査の目的にて下部消化管内視鏡検査を受けたところ,内視鏡抜去時に抵抗を感じ,同時に下腹部痛が増強した.左鼠径部が膨隆し,CTにてヘルニア囊内にS状結腸と内視鏡が嵌頓していた.整復を試みるも疼痛が強く,腸管損傷の可能性もあったため全身麻酔下に整復およびヘルニア根治術を行う方針とした.
腹腔鏡手術にて開始し,腹腔内操作と体外からの圧迫により嵌頓を解除したが,S状結腸の一部に漿膜損傷を認めた.術中内視鏡では明らかな粘膜壊死を認めないため,腸管切除はせず漿膜面の損傷を直視下に修復した後に前方修復術によるヘルニア根治術を行った.下部消化管内視鏡検査中のヘルニア嵌頓を経験することは極めて稀であるが,腹腔鏡および術中内視鏡を用いることで低侵襲かつ安全に治療することができたので報告する.