2020 年 45 巻 3 号 p. 250-256
症例は66歳の女性で,10年以上前に便秘の原因検索で直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome;以下MPS)と診断され,保存的治療を施行してきた.しかし,徐々に隆起性病変が増大し直腸の狭窄が悪化したため,手術適応と判断した.繰り返し施行した生検では悪性所見は認められなかったが,腫瘍マーカーも基準値を超えており,直腸癌の合併が否定できず病変切除が必要と判断した.低位前方切除術(low anterior resection;以下LAR)を施行し,また虚血性腸炎の既往もあるため,縫合不全を懸念し回腸人工肛門造設術も施行した.下部消化管内視鏡検査(colonoscopy;以下CS)にて再発のなきことを確認し,LAR6カ月後に人工肛門閉鎖術を施行した.その後も保存的治療を継続していたが,CSでMPSの再発を認めた.しかし,術前ほどの隆起性病変を認めず保存的治療を継続した.LARはMPSの一時的な改善,切除による組織診断には寄与するものの根本的治療とはいえず,LAR術後も保存的治療の継続は必須と考えられた.