2020 年 45 巻 3 号 p. 257-262
症例は66歳の男性.他院で肝障害精査中,肝外側区域に60mm大の肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)を指摘され治療予定であったが,仕事中にターレット式構内運搬自動車の操作中に転倒し心窩部から左側腹部にかけてハンドルに強打し当院に救急搬送された.来院時血圧109/61mmHg,脈拍数64/min,Hb12.9g/dLと明らかな貧血所見は認めなかったが,腹部造影CTにて肝左葉に7cm大の造影不良域を認め既知のHCCと考えられた.腫瘍内に造影剤の血管外漏出を認め,周囲に腹水も見られたため外傷性HCC破裂からの活動性出血と診断し,緊急transcatheter arterial embolization(TAE)を施行し,止血が得られた.血管内治療後,全身状態の安定を確認した時点で肝予備能評価を行い,受傷後19日目に開腹血腫除去術および肝外側区域切除術を施行し,合併症なく術後11日目に退院となった.肝切除術後12カ月の現在再発所見なく外来経過観察中である.外傷性HCC破裂に対してTAE後に肝切除を施行した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.