症例は86歳,男性.腹痛・血便・排便困難を主訴に当院紹介受診となった.身体所見では下腹部に手拳大の腫瘤を触知し,下部消化管内視鏡検査ではS状結腸に半周性1型腫瘍を認め,生検で中分化管状腺癌と診断された.血液検査ではα-fetoprotein(AFP)193.4ng/mlと高値を示し,AFP産生大腸癌が疑われた.術前CT検査では多発肝転移・腹膜播種が疑われたが,原発巣による出血・狭窄症状が制御困難となる可能性を考慮して,原発巣切除の方針となり,手術はS状結腸切除術を施行した.病理組織検査では,高分化から中分化管状腺癌に相当するが,弱好酸性胞体を持つ細胞の索状構造など多彩な組織像を認め,AFP免疫染色陽性も認められたため,AFP産生S状結腸癌pT4b(小腸間膜),NX,M1c2(H,P),pStage Ⅳcと診断した.術後2週間まで経過は概ね良好であったが,術後16日より貧血の進行を認めた.CT再検すると腹膜播種・肝転移が急激に増大し,腹膜播種からの腫瘍出血が認められたが,保存的治療の方針となり,術後1カ月で永眠された.今回われわれは腹膜播種の急激な増大による出血により,急激な転帰を辿ったAFP産生S状結腸癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.