日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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46 巻, 1 号
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原著
  • 大津 智尚, 横山 裕之, 櫻井 俊輔, 禰宜田 真史, 林 泰三, 武田 洋平, 田中 健士郎, 岸田 貴喜, 杉本 博行
    2021 年 46 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    左側結腸癌に対する腹腔鏡下結腸左半切除術後早期の腸閉塞を経験することがある.2014年から2019年に当院で同術式を施行した症例の腸閉塞の発生頻度や原因,腸間膜閉鎖との関連などを検討した.術後30日以内の機械的腸閉塞は21例中4例(19%)に認め,他の領域よりも高率であった.いずれも術後2週間以内の発症で,狭窄部位はトライツ靭帯を出てすぐの上部空腸だった.原因は腸間膜内ヘルニアが1例,下腸間膜静脈切離部への癒着が3例で,内ヘルニアの1例は再手術を要した.腸間膜の閉鎖法ごとに検討すると腸間膜の非閉鎖は腸閉塞の有意な原因ではなく,不完全な閉鎖が問題であった.今後も腸間膜閉鎖の方法については検討課題である.

臨床経験
  • 成田 潔, 登内 仁, 町支 秀樹
    2021 年 46 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    目的:従来の中心静脈カテーテル留置は重篤な合併症を起こしうるため,近年合併症率の低い末梢留置式中心静脈カテーテル(PICC)が注目を集めている.当科では,中心静脈ポート(CVポート)に関しても安全な留置を目指し,上腕留置式CVポート(上腕CVポート)を導入したので,従来の前胸部留置式CVポート(前胸部CVポート)と比較した成績およびその有用性を報告する.

    方法:当科で2018年4月から2020年8月に造設したCVポート237例のうち,前胸部CVポート111例と上腕CVポート126例を後方視的に比較検討した.

    結果:手術時間は上腕CVポートで有意に短かった.前胸部CVポートで13例(気胸1例を含む),上腕CVポートで9例の合併症を認め,有意差を認めなかった.

    結語:上腕CVポートは気胸を生じえないなど安全性に優れ,手術時間短縮も期待でき,第一選択として適している術式と考えられた.

  • 西森 英史, 三浦 秀元, 平間 知美, 大野 敬祐, 鬼原 史, 矢嶋 知己, 秦 史壯
    2021 年 46 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    2011年6月より2018年4月までに80歳以上の高齢者740例に対し橈側皮静脈カットダウン法で中心静脈ポート留置を試みた.橈側皮静脈欠損例を35例(4.5%)に認め,これらを除いた705例を検討対象とした.留置成功率は88.9%(627/705回)であり,不成功例は鎖骨下あるいは内頸静脈穿刺アプローチに変更し全例留置可能であった.手術時間は平均13.9分であった.留置に伴う合併症を1.6%(10/627回)に認め,内訳は皮下血腫:7例,出血,ポート反転,ポート位置異常が各1例であった.気胸,動脈穿刺は認めなかった.また観察しうる留置期間内でピンチオフも経験していない.

    本法は高齢者においても安全かつ短時間で施行可能なポート留置法であり,標準術式になりうる手技であると考える.

  • 長内 孝之, 上平 大輔, 村形 綾乃, 谷田部 悠介, 田波 秀朗
    2021 年 46 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    乳癌患者術後の骨転移検索および他内臓疾患への転移検索として非造影拡散強調画像併用全身核磁気共鳴画像(diffusion weighted whole body with background body signal suppression magnetic resonance imaging,以下,DWIBS)の有用性を検討した.乳癌術後患者60例に骨シンチグラフィーと全身核磁気共鳴(magnetic resonance imaging,以下,MRI)(1.5テスラ)を実施しDWIBS法による脂肪抑制併用DWIとbalanced SSFPシーケンスを使用したheavy T2強調画像を4横断像にて頭頂部から骨盤部まで30sliceで4区域撮像した.さらにfast spin echo T1強調画像の矢状断による全脊髄scanを29sliceで2区域の範囲を撮像した.60例のうちDWIBSにて3例に集積性を認め,うち2例をDWIBS検査陽性と診断した.骨シンチにて1例(1.6%)に集積性を認め骨転移(転移箇所2か所以内のOligometastasis)と診断した.他臓器への転移は認めなかった.DWIBSは感度100%,特異度96.6%,陽性的中率33.3%,陰性的中率100%であった.DWIBS陽性BS陰性の1例は骨造影CTもしくは造影MRにても転移を示す所見に乏しく抗がん剤治療歴による影響を考えた.内臓臓器では3例にDWIBSにて転移疑いであったが精査では陰性であった.DWIBSは乳癌の骨転移検索には有用な検査方法の可能性が示唆された.

症例報告
  • 大西 かよ乃, 壽美 哲生, 石橋 康則, 勝又 健次, 土田 明彦, 松林 純, 長尾 俊孝
    2021 年 46 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は56歳女性.左乳癌,cT4bN2aM0 Stage Ⅲb,Luminal-HER2 type【estrogrn resepror(ER)+,progesteron reseptor(PgR)-,human epidermai growth factor receprot(HER2)+】の診断で,術前化学療法,抗HER2療法を行い,左乳房全摘除術+腋窩リンパ節郭清を施行した.術後病理結果はpT4bN2aでLuminal type【ER+,PgR+,HER2-】であった.術後経過中に肝と横行結腸に腫瘍を指摘され,共に生検にて低分化型腺癌【ER-,PgR-,HER2-】の診断となった.肝,結腸腫瘍は乳癌と免疫染色の発現は異なったが,Cadual type hemobox2(CDX2)は陰性であったことから,乳癌の肝・大腸転移を疑った.結腸腫瘍は増大を示したため,横行結腸切除術を施行した.切除検体の病理学所見,さらにGATA binding protein3(GATA3)を追加染色し陽性であったことから,乳癌大腸転移と確定診断した.術後8カ月経過したが,消化器症状は認めず化学療法施行中である.本症例は,乳癌と大腸腫瘍の免疫染色に相違を認めたことから,術前診断に難渋したが,CDX2,GATA3が診断に有用であった.乳癌の既往がある症例では大腸転移の可能性を念頭に置き診断をする必要がある.

  • 藤田 康博, 尾立 西市, 荻野 利達, 中島 洋, 中村 賢二, 田村 和貴, 八谷 泰孝, 福山 時彦
    2021 年 46 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は73歳女性.整形外科疾患の術前胸部単純X線写真で右肺門部に6cm大の腫瘤影を指摘され,当科紹介となった.CT,MRIで前縦隔に6.5cmの分葉状腫瘤を認め,FDG-PET検査では前縦隔腫瘤にSUVmax 65.4の異常集積を認めた.胸骨正中切開下に胸腺胸腺腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は上行大動脈上の心膜に強固に癒着していたが,心膜合併切除を行い,完全切除できた.術後に胸腺異型カルチノイドと診断され,前縦隔に60Gyの放射線照射を追加した.現在,術後2年経過して無再発生存中であり,今後も厳重な経過観察を継続する.稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する.

  • 正見 勇太, 加藤 憲治, 中橋 央棋, 春木 祐司, 藤永 和寿, 谷口 健太郎, 勝田 浩司
    2021 年 46 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は28歳,女性.来院3日前に餃子を大量摂取した.翌日に嘔吐が出現したため近医受診したが,点滴のみで帰宅となった.しかしその後も症状は改善しなかったため,再度近医受診し,精査加療目的に当院紹介となった.ここ2年間で40kgの体重減少があった.来院時ショックバイタル,腹部膨満軟,圧痛はあったが腹膜刺激兆候は認めなかった.血液ガス分析では代謝性アシドーシスを認めた.腹部単純CTを施行したところ,胃内に多量の残渣を認めたが,明らかなFree airは認めなかった.まず胃管による胃内減圧の方針とした.翌日に造影CTを施行したところ胃壁に造影不良域を認め,上部消化管内視鏡検査では胃体部粘膜の黒苔の付着,粘膜脱落を認めた.以上より急性胃拡張による胃壊死と診断し,緊急手術を施行した.明らかな胃穿孔は認めなかったものの,胃体部前壁,後壁に広範な壊死所見を認め,胃全摘術,Roux-en Y再建を施行した.術後経過は良好で26病日に退院となった.

  • 西田 孝宏, 高原 善博, 吉村 悟志, 宇野 秀彦
    2021 年 46 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は84歳男性.胃癌の診断で腹腔鏡下幽門側胃切除術,Billroth Ⅰ法(デルタ吻合)が施行された.が施行された.術後麻痺性イレウスとなるも,保存的に改善,術後6日に食事摂取開始,14日目に退院となった.術後20日目に腹部膨満,嘔吐を認め,CTで空腸の拡張とデルタ吻合部での狭窄を認めた.経鼻胃管による減圧で改善したが,食事摂取再開後に症状の再燃を認め, 手術の方針となった.腹腔鏡下に観察すると,空腸が横行結腸を乗り越え,吻合部前面に強固に癒着し,狭窄していた. 癒着の原因はデルタ吻合の共通孔閉鎖に使用したステイプルと考えられた.癒着剝離と空腸部分切除を施行した.術後経過は良好で,再手術後10日目に退院となった.

    腹腔鏡下胃切除術におけるデルタ吻合は標準的術式である.デルタ吻合による腸閉塞の報告はなく非常に稀な合併症であるが,共通孔閉鎖にステイプルを使用せず,連続縫合にて閉鎖するなどの癒着を考慮した再建方法が必要であると考えられた.

  • 杉山 宏和, 北村 優, 河村 史朗
    2021 年 46 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は,40歳女性.間欠的な下腹部痛を主訴に受診した.腹部CT検査で小腸重積を指摘され,腹腔鏡下手術を実施した.手術開始時の腹腔鏡所見では明らかな小腸重積は観察されなかった.回腸漿膜が発赤し小腸間膜リンパ節が発赤腫脹している箇所を認め,小開腹創から同部を挙上し,1.5cm大の結節を触知し,良性腫瘍と判断し部分切除を実施した.最終病理結果は,inflammatory fibroid polypであった.一般に成人小腸重積は自然に整復されやすいが再燃されるケースが多く,本症例も該当した.成人腸重積の原因の多くは器質疾患で手術適応となるが,術式は悪性疾患が含まれるので原疾患により適宜変更することが必要になる.今回,原因となったinflammatory fibroid polypの特徴と,成人腸重積症に対する腹腔鏡手術について,文献的考察を加えて報告する.

  • 田中 秀治, 福井 貴巳, 徳山 泰治
    2021 年 46 巻 1 号 p. 62-71
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は86歳,男性.腹痛・血便・排便困難を主訴に当院紹介受診となった.身体所見では下腹部に手拳大の腫瘤を触知し,下部消化管内視鏡検査ではS状結腸に半周性1型腫瘍を認め,生検で中分化管状腺癌と診断された.血液検査ではα-fetoprotein(AFP)193.4ng/mlと高値を示し,AFP産生大腸癌が疑われた.術前CT検査では多発肝転移・腹膜播種が疑われたが,原発巣による出血・狭窄症状が制御困難となる可能性を考慮して,原発巣切除の方針となり,手術はS状結腸切除術を施行した.病理組織検査では,高分化から中分化管状腺癌に相当するが,弱好酸性胞体を持つ細胞の索状構造など多彩な組織像を認め,AFP免疫染色陽性も認められたため,AFP産生S状結腸癌pT4b(小腸間膜),NX,M1c2(H,P),pStage Ⅳcと診断した.術後2週間まで経過は概ね良好であったが,術後16日より貧血の進行を認めた.CT再検すると腹膜播種・肝転移が急激に増大し,腹膜播種からの腫瘍出血が認められたが,保存的治療の方針となり,術後1カ月で永眠された.今回われわれは腹膜播種の急激な増大による出血により,急激な転帰を辿ったAFP産生S状結腸癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 小畑 真介, 小林 泰三, 廣野 靖夫, 五井 孝憲
    2021 年 46 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は72歳女性.同時性腹膜転移を伴う下行結腸癌に対し結腸部分切除(D1)および化学療法(mFOLFOX6療法)を施行していた.経過中に末梢神経障害および好中球減少により,UFT®療法に変更した.原発巣切除後1年経過時に腹痛を主訴に当院受診した.血液検査ではHb低値,腫瘍マーカー高値を呈し,腹部CT検査では腹腔内出血あり,骨盤内に最大径15cmの内部構造が不均一な造影効果を伴う,辺縁不整な腫瘤性病変を認めた.転移性卵巣腫瘍による腹腔内出血が疑われ,片側付属器切除術を施行した.病理所見では卵巣内に高分化管状腺癌あり,免疫染色から大腸癌卵巣転移と確定診断した.大腸癌卵巣転移の頻度は増加傾向にあるが,腹腔内出血を合併する報告は少なく稀な病態であった.急速な増大による被膜損傷が原因であった.

  • 青竹 利治, 土居 幸司
    2021 年 46 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    デスモイド腫瘍は組織学的には良性であるが,臨床的には良悪性境界腫瘍に位置づけられ,癌の再発との鑑別に難渋する.症例1は65歳男性.2016年7月直腸癌に対し術前化学放射線治療後に腹腔鏡下根治術を施行した.病理診断はT2N0M0,ypStage Ⅰであった.2018年11月CT検査で骨盤内腫瘍を指摘された.MRIおよびPET-CT検査にて,癌の再発および線維成分の豊富な腫瘍(デスモイドなど)が疑われた.生検を施行し腹腔内デスモイドと診断後,腹腔鏡下切除術を施行した.症例2は61歳男性.2017年7月直腸癌に対し術前化学放射線治療後に腹腔鏡下根治術を施行した.病理診断はT2N1aM0,ypStage Ⅲaであった.2019年11月腹部超音波検査にて下腹部に腫瘤を指摘された.MRIおよびPET-CT検査にて,癌の再発および腸間膜Gastrointestinal stromal tumor(GIST)疑いと診断された.腹腔鏡下切除術を施行し腹腔内デスモイドと診断された.いずれも2020年9月現在,無再発生存中である.

  • 岡本 成亮, 佐藤 良平, 筋師 健, 早稲田 正博, 鈴木 哲太郎
    2021 年 46 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    68歳女性.腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.CTで小腸内に石灰化を伴う構造物があり口側腸管の拡張を認めた.胆囊十二指腸瘻も認められ,胆石イレウスの診断で入院した.保存的治療では改善せず,第3病日に手術を施行した.小腸内に嵌頓していた胆石は腸切開し摘出したが,CT上胆石を他にも複数認めており可及的に摘出する方針とした.しかし,高度肥満に加え,胆囊炎の影響で癒着が高度であり,十二指腸および胆囊の十分な観察は困難であった.そこで術中上部消化管内視鏡検査を併せて施行し腸管内より食道から空腸起始部までを観察することで,腸管内,胆囊内の胆石を全て確認し摘出した.胆石除去術後の胆石イレウスの早期再発の報告があり,初回手術時に可能な限りの胆石を除去することが望ましい.本例では術中内視鏡を併用することで食道から終末回腸までの腸管内および胆囊内の胆石を全て除去できたため報告する.

  • 田中 寛, 播本 憲史, 新木 健一郎, 久保 憲生, 渡辺 亮, 樋口 徹也, 星 恒輝, 下田 雄輝, 調 憲
    2021 年 46 巻 1 号 p. 90-96
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    83歳男性.増大する膵頭部囊胞性病変にて紹介.造影CT,MRI,超音波内視鏡では内部に充実成分を伴い不整に造影される病変があり,FDG-PET CTでは高度集積を認めた.膵液・胆汁細胞診では悪性細胞は認められないものの,画像所見および増大傾向があることから膵管内乳頭状粘液腺癌と診断.膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除再建を施行.切除標本では膵管内乳頭状粘液腺腫があり,近傍に肉芽腫を伴っていた.悪性細胞は認められなかった.組織病理診断は膵管内乳頭状粘液腺腫に並存した黄色肉芽腫であった.

  • 鈴木 悠太, 大野 玲, 村瀬 秀明, 樋口 京子, 吉野内 聡, 吉田 剛, 林 久美子, 上田 吉宏, 小畑 満
    2021 年 46 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    患者は21歳女性.主訴は左上腹部の膨満感.既往歴,家族歴に特記事項なし.月経周期に異常なし.2020年5月初旬頃から心窩部痛が出現,近医受診したが改善せず,5月下旬当院救急外来初診となった.腹部所見では左季肋部に膨隆があり自発痛と圧痛を認めた.腹膜刺激症状はなかった.症状が強く精査加療目的で入院となった.初診時血液一般検査では異常はなかったが,腫瘍マーカーのCA19-9は163U/mlと上昇していた.腹部造影CT所見では左上腹部に170×160×100mmの囊胞性腫瘤があり囊胞辺縁の増強効果から脾臓由来の病変が示唆された.画像所見上は明らかな感染合併はなかった.巨大脾囊胞と診断し腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.手術時間は3時間30分,術中出血量は50mlであった.術後経過は良好で術後10病日に退院となった.病理組織学的検査所見は上皮性囊胞であり悪性所見はなかった.血清CA19-9は術後速やかに正常化した.

  • 佐藤 広陸, 藤原 綾子, 植村 守, 三宅 正和, 平尾 素宏, 髙見 康二
    2021 年 46 巻 1 号 p. 102-109
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル フリー

    症例は20代女性.腹痛にて前医を受診し,左横隔膜ヘルニアによる腹腔内臓器の胸腔内脱出と診断され,腹腔鏡下に手術が施行された.臓器の置換整復は行ったがヘルニア門の修復は困難であり,一旦手術を終了して当院に緊急転院した.転院時には左緊張性気胸および,腹腔内臓器の左胸腔内への再脱出・嵌頓をきたしており,経胸腹併用アプローチにて再手術を行った.横隔膜左背側にヘルニア門を認め,胃,大腸,小腸,大網,および脾臓が胸腔内へ脱出嵌頓しており,Bochdalek孔ヘルニアと診断した.脱出嵌頓臓器を還納整復し,ヘルニア門を閉鎖した.術後,嘔吐・腹痛が出現したため術後8日目に腹部造影CTを撮像し,腸回転異常症による小腸閉塞と診断した.同日,緊急開腹手術を行い,Ladd手術および腸管固定術を施行した.術後経過は良好で再々手術後17日に退院した.成人Bochdalek孔ヘルニア修復の際は,高頻度に合併する腸回転異常症に留意すべきであり,若干の文献的考察を加え検討を行った.

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