2021 年 46 巻 2 号 p. 154-159
完全内臓逆位を有する84歳,女性.便潜血陽性で当科紹介.下部消化管内視鏡精査の結果,SD junctionに1/3周性の2型病変を認めた.完全内臓逆位を伴ったS状結腸癌の診断で,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行.術前の3D-CTで支配血管と癌との位置関係を確認し,さらに器械やモニターの配置や術者,助手,看護師の立ち位置を真逆とし手術開始した.腹腔内は広範囲に高度な癒着を認め,その癒着剝離に難渋し,手術時間416分と要したが,開腹移行や術後合併症なく経過良好だった.完全内臓逆位を伴った大腸癌の腹腔鏡手術は26例の報告がある.いずれも過度な手術時間の延長や術後合併症の報告もなく経過良好だった.本症例でも過去の報告同様に手術セッティングを通常と逆で行った.術中は鏡面構造を常に意識する必要はあるが,解剖の同定を誤ることなく慎重な手術操作や術野の確保に留意すれば,血管処理においても,右手操作で通常通りの安全な手術が可能と考える.