2024 年 49 巻 4 号 p. 367-373
症例は73歳男性.下咽頭癌に対して咽頭喉頭頸部食道切除術が施行され外来フォロー中であった.術後2年目に上部消化管内視鏡検査で胸部中部食道に不整な粘膜病変を認め生検で扁平上皮癌と診断された.CT検査で所属リンパ節転移,遠隔転移はなかったものの高度の肺気腫性変化と慢性炎症性変化を認めた.また呼吸機能検査で混合性換気障害を認めた.胸部中部食道癌の診断のもと手術治療が検討されたが,重度の肺気腫と慢性閉塞性肺障害を合併していたことより呼吸器合併症回避のため経裂孔的食道切除術を施行した.腹部・中下縦隔操作は腹腔鏡にて行い,また頸部操作では移植された遊離空腸の損傷と気管孔の虚血に注意した.術後経過は良好で呼吸器合併症や縫合不全,気管壊死はなく術後25日目に退院となった.下咽頭癌術後に診断された呼吸器疾患を有した食道癌症例に対し,経裂孔的食道切除術を選択し良好な経過を得た症例を経験したため報告する.