2024 年 49 巻 6 号 p. 512-515
直腸癌術後の直腸膣瘻は比較的稀な合併症であるが,難治性となり,観血的治療が必要となることが多い.今回われわれは直腸癌術後の直腸膣瘻に対し,エストリオール膣錠を投与し治癒した1例を経験した.
症例は70代,女性.直腸癌(Rb)に対し腹腔鏡下低位前方切除術および一時的回腸瘻造設術を施行した.術後は良好に経過し退院.術後補助化学療法を行った後,回腸瘻閉鎖を予定し注腸検査を施行したところ,直腸膣瘻を認めた.また,同時に施行したCT検査で肺転移の診断を得た.肺転移の手術を優先し,直腸膣瘻に対しエストリオール膣錠を開始した.肺転移の手術後に再度注腸検査を施行し,瘻孔の消失を認めた.エストリオール膣錠は閉経後の膣自浄作用の回復や子宮・膣周囲の血流増加による炎症抵抗性の増強,筋層の肥厚促進などの作用を有し,瘻孔の自然治癒を促進する可能性があり,直腸膣瘻の治療に対し第一選択肢とする意義があると考えられる.