1995 年 20 巻 4 号 p. 259-262
1992年8月から1995年3月までに18例の胸腔・縦隔疾患に対し胸腔鏡下手術を施行した。その内容は縦隔・胸壁腫瘍が12例, 胸部交感神経切除術が3例, 術後肺瘻が2例, 胸膜生検が1例であった。縦隔・胸壁腫瘍例の組織診断は先天性嚢腫が6例, 神経鞘腫5例, ホジキン病1例であった。嚢腫6例に対し内容吸引と嚢腫壁切除を施行し, 神経鞘腫5例はすべて胸腔鏡下に摘出した。交感神経切除術を3例に行い著効した。肺瘻症例は瘻孔を確認しfibrin糊で瘻孔を閉鎖した。胸膜炎1例において確定診断を得た。胸腔鏡手術は重篤な合併症がなく, 安全に施行可能であった。成績は満足すべきもので, 良性縦隔・胸壁腫瘍の切除や胸部交感神経切除術, 一部の術後胸腔合併症 (肺瘻, 乳糜胸, 膿胸など) の治療は胸腔鏡のよい適応と思われた。胸腔鏡用処置用具のさらなる発達, 手技の洗練, 症例の蓄積により今後ますます多くの胸腔内疾患に対して胸腔鏡の適応が広がると予想される。