日本外科系連合学会誌
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悪性腫瘍家族歴陽性胃癌症例の特徴
腫瘍増殖能およびp53蛋白発現の観点から
市倉 隆大草 康辻本 広紀冨松 聡一望月 英隆
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キーワード: 胃癌, 悪性腫瘍家族歴
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1996 年 21 巻 6 号 p. 951-955

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抄録

悪性腫瘍家族歴陽性胃癌について腫瘍増殖能およびp53蛋白発現に注目して検討した。1989~93年の胃癌切除339例を, 悪性腫瘍に罹患した第一度近親者が発端者以外に2人以上であった集積群 (24例), 1人であった中間群 (77例), 0人であった対照群 (238例) に分けた。近親者に発生した悪性腫瘍は胃癌が圧倒的に多かった。臨床病理学的諸因子に各群間の差はなかった。胃癌組織のパラフィン包埋切片を用い, PCNA, p53蛋白の免疫染色を行うと, PCNA標識率に3群間の差はみられなかったが, p53蛋白の染色陽性例は集積群で74%と, 中間群24%, 対照群38%に比べて有意に高頻度であった (p<0.05) 。集積群の中でも胃癌が2人以上集積した群では1人以上の群に比べ, p53蛋白 (++) 以上の症例が多い傾向にあった。したがってp53蛋白陽性の胃癌症例では, 近親者に対し胃癌のスクリーニング検査を行うことが望ましいと考えられた。

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