1996 年 21 巻 6 号 p. 948-950
高度進行胃癌に対して化学療法を行う前に感受性を予測する目的で, 化学療法によるapoptosisを誘導するのに重要な役割をもつ野生型p53との関連から, 内視鏡生検標本中のp53蛋白の免疫組織化学的染色を行った。対象は5-FU+low dose cisplatinによる化学療法を施行した進行・再発胃癌15例である。化学療法施行前の生検標本を用いてp53およびbcl-2蛋白のABC染色を行い, またTUNEL法によるapoptotic indexの変化を測定した。施行前の変異型p53の発現率は奏効例 (CR1例, PR5例) で33%, 非奏効例 (NC9例) で100%であり, 有意差を認めた。bcl-2蛋白はNCの1例のみが陽性であった。施行前後でapoptotic indexは有意ではないが増加傾向を認めた。結論として, 胃癌に対する化学療法施行前の生検標本中の変異型p53蛋白発現は化学療法に対する抵抗性の予測に有用であった。