日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
モチリンとソマトスタチンの変動からみた早期胃癌幽門側胃亜全摘術 (Billroth I法) 後における早期ダンピング症候群の病態生理学的検討
富田 凉一滝沢 秀博阿部 義蔵丹正 勝久
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 22 巻 2 号 p. 163-168

詳細
抄録

早期胃癌幽門側胃亜全摘術 (Billroth I法, D2リンパ節郭清, 根治度A) 後24症例を対象に, 直接問診法 (全身症状陽性例の有無について) を用い, 非ダンパー (18例) とダンパー (6例) の2群に分類した。そして, それらの十二指腸空腹期強収縮帯と血中モチリンとソマトスタチン値の変動について検討し, 以下の結果を得た。 (1) 空腹期強収縮帯は, 非ダンパーでは多くの例に認めたが, ダンパーでは全例に認めなかった。 (2) 血中モチリン値は, 空腹期強収縮帯陰性例では陽性例に比較して, phase I, IIより低値を, phaseIIIより明らかに低値を示した。 (3) 血中ソマトスタチン値は, 空腹期強収縮帯陰性例では陽性例のphase I, II, IIIに比較し明らかに高値を示した。以上より, 早期ダンピング症候群例には空腹期消化管運動異常が存在し, その発生にモチリンとソマトスタチンが関与し, 両者の協調不全により, 生ずる可能性が示唆された。

著者関連情報
© 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top