日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
高齢者大腸癌の特徴と外科的戦略
梅木 雅彦松田 昌三栗栖 茂八田 健小山 隆司喜多 泰文木花 鋭一西尾 渉柴田 正樹
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 24 巻 5 号 p. 715-719

詳細
抄録

老年人口比率23.9%と高齢化の著しい人口16万淡路島の中核医療施設である兵庫県立淡路病院外科で過去14年間に経験した80歳以上高齢者大腸癌手術症例161例について検討した。80歳以上高齢者は症例全体の15.9%をも占め, その24.4%をstage IVが占めるなど進行癌が多く, さらにイレウスや穿孔といった緊急例も32.9%と若年者に比べ高率にみられた。手術成績は術後入院のまま死亡した症例が4.3%で, 70歳未満の0.5%, 70歳代の1.4%に比べ高率であった。しかし, 死亡7例を検討すると7例中3例が重篤緊急例で, 2例は多発肝転移例, 残る2例のうち1例は思いがけず肺梗塞で失ったものであるなど, 高齢者の末期的ともいえる症例に対してもQOLの向上と救命のため手術がなされた結果といえた。遠隔成績は, 手術死亡, 他病死を含む5年生存率で70歳未満の67.2%, 70歳代の64.3%に対し80歳以上高齢者では45.0%と有意に低率であった。しかし, stage IVが24.4%を占めるなど進行症例が多いことをも考慮すると80歳以上といえども手術を行えば約半数に5年生存が得られるという結果は満足すべきものと考えられた。

著者関連情報
© 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top