抄録
症例は66歳女性, 全身倦怠感, 食欲不振にて発症した。腹部膨満を認め, 腹部超音波, 骨盤CT検査にて骨盤腔内の膿瘍が疑われた。胸部単純X線写真では両肺野に多発性結節陰影を, 大腸内視鏡検査では直腸Rsの癌性狭搾を認めた。直腸癌ないし卵巣癌が骨盤膿瘍を形成し, 多発性肺転移と来したものと診断し, Hartmann手術を施行した。術中, 骨盤腔内に約700mlの膿貯留を認め, 術後診断は3型直腸癌, 壁深達度Si (卵巣) で, 病期IVであった。術後9カ月で癌死した。骨盤膿瘍にて発症する直腸癌は稀であり, 若干の文献的考察を加えて報告した。