抄録
胃癌に対するクリニカルパス (パス) の効果を胆嚢結石症のパスと比較し, その有用性と問題点について検討した。腹腔鏡下胆嚢摘出術 (LC) と幽門側胃切除術 (DG) に対してパスを導入し, それぞれのパス導入前の症例を対照群, パス導入後の症例をパス群とした。術後経過, 医療費について比較し, それぞれのパスの有用性について検討した。また二つのパスの効果を比較検討した。LC, DGともに術後合併症の増加は認めず, 術後入院期間はともに約3日間の短縮を認めた。医療費の有意な低下は認めなかった。LCでは全例にパスを適用したのに対して, DGでは術前合併症のため適用できない症例があった。またDGでは, 胃癌病期, 術後合併症, 補助療法が入院を延長させる因子であった。パスは様々な疾患に対して適用可能であり, 同様の効果が期待できると考えられた。しかし胃癌などの悪性疾患に適用する場合は疾患, 治療の多様性を考慮することが必要と考えられた。