2005 年 30 巻 5 号 p. 757-760
虫垂粘液嚢腫に対してtotal biopsyとして腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行し, 過大な手術侵襲を避けることができたので報告する。症例は55歳の男性で, 2ヵ月前から軽い右下腹部痛が生じた。腹部は平坦, 軟で, 腹部超音波検査やCT検査では右下腹部に10.5×3.5cm大の腫瘤を認めた。注腸造影検査では盲腸内下方に円球状の陰影欠損像を, 内視鏡検査では隆起性病変を認めた。以上から虫垂粘液嚢腫と診断した。腹腔鏡下に観察すると, 虫垂が盲腸底部に重積していた。超音波凝固切開装置を用いて盲腸を周囲から剥離し, 虫垂根部を含めた盲腸を自動縫合器で切除した。虫垂の表面は平滑で, 内腔にはゼリー状物質が充満していた。組織学的には腫瘍性粘液上皮は認めず, 過形成と診断した。虫垂粘液嚢腫における良悪性の術前診断は困難であり, total biopsyとしての腹腔鏡下盲腸部分切除術は有意義な手術術式と思われた。