日本外科系連合学会誌
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頸部食道再建後瘻孔閉鎖に難渋した1例
松永 和秀磯貝 典孝朝村 真一今野 元博塩崎 均上石 弘
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2005 年 30 巻 6 号 p. 856-861

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抄録

症例は63歳, 主訴は頸部瘻孔による摂食・嚥下障害.近医にて食道癌のため, 右開胸開腹食道亜全摘・有茎右結腸再建術を施行。術後, 頸部瘻孔が出現し, 2回の瘻孔閉鎖術を施行するも瘻孔閉鎖が困難であった。そこで当科にて, 大胸筋皮弁による瘻孔閉鎖術を施行するも, 術後7日目胸部皮膚に瘻孔が再発した。術後の嚥下造影所見では, 食道・回腸 (結腸) 吻合相当部から胸部皮膚に開口した瘻孔が認められた。そのため再度, 離開部の再縫合術を施行したが, 術後12日目胸部に針孔程度の瘻孔が再発した。嚥下造影所見では, 瘻孔路は縮小するも, 同様に食道・回腸 (結腸) 吻合相当部から胸部皮膚に開口した瘻孔が認められた。大胸筋皮弁による頸部食道再建後の瘻孔形成率は高いとされている。皮弁皮膚と腸粘膜との縫合部の瘻孔治癒不全の要因と一つとして, 嚥下圧 (空嚥下圧) の関与が示唆されたが, 今後適切な瘻孔閉鎖術の方法を確立していくことが必要であると考える。

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