日本外科系連合学会誌
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化学療法中癌性髄膜炎をきたした高度進行胃癌の1例
宮原 孝治二宮 基樹高田 晋一目黒 俊成
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キーワード: 胃癌, 癌性髄膜炎
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2005 年 30 巻 6 号 p. 873-877

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抄録

大動脈周囲リンパ節転移を伴う高度進行胃癌に対して化学療法中, 急激に意識障害をきたし死亡し, 病理解剖により癌性髄膜炎と診断された例を経験したので報告する。症例は56歳, 男性。cT3 (SE) N3 H0 P0 M0 cStage IVの高度進行胃癌であり, 5-FUとPaclitaxelによる併用化学療法により治療していた。2コース目, day8より発語障害と平衡感覚障害が出現し, day18より意識障害をきたしday21に死亡するという進行性の中枢神経障害を伴いつつ急激に増悪する臨床経過をたどった。病理解剖の結果, 癌性髄膜炎の所見が認められ, これが本症例の急激増悪と死亡の原因と考えられた。胃癌による癌性髄膜炎は稀な病態であるが非常に急激な経過をたどり死亡する例が多い。新規抗癌剤の登場により化学療法が有効な治療選択となり高度進行胃癌でも長期生存が増加してきている現在, 本病態は今後増加していく可能性が高く考慮すべきと考えられた。

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