2024 年 32 巻 1 号 p. 128-134
(目的)
中学野球選手おける四肢の可動性と筋タイトネスが1 年後の投球障害肩発症に及ぼす影響を明らかにすること.
(方法)
対象は中学硬式野球選手とした.投球障害肩は投球時肩関節痛がある場合または整形外科医の診察にて肩関節に異常所見を認めた場合とした.調査項目は基本情報,四肢可動性,筋タイトネスとした.ベースライン測定から1 年後に投球障害肩の有無を確認し発症群,非発症群に群別した.各調査項目の群間比較には,対応のないt 検定またはMann-Whitney のU 検定を用いた.その後群間比較でp<0.25 の変数を説明変数とするロジスティック回帰分析にて,発症に関連する危険因子を検討した.
(結果)
解析対象47 名中14 名が発症群に該当した.身長,体重,肩関節・股関節・足関節可動性は2 群間で有意差を認めなかった.対応のないt 検定またはMann-Whitney のU 検定の結果,非投球側下肢HBD は発症群が非発症群よりも有意に高値であった(p=0.007).ロジスティック回帰分析の結果,非投球側下肢HBD 高値が発症に関連する危険因子として抽出された(オッズ比:1.201,95%CI:1.058-1.374).
(考察)
発症の危険因子に非投球側下肢HBD 高値が抽出された.投球には下肢,体幹,上肢を連動させる全身運動が必要であり,潜在的な大腿直筋タイトネスは重心移動を妨げ,肩関節へのストレス増加を招く危険性がある.