抄録
症例は25歳,男性.先天性二尖大動脈弁の診断で外来経過観察中であった.3カ月から不明熱が出現し,近医を受診した.抗生剤加療を受けたが改善は得られなかった.心エコー図を施行したところ,僧帽弁前尖に疣贅を認め当科紹介となった.来院後の経食道心エコー図では重度の大動脈弁逆流と僧帽弁前尖の疣贅と弁瘤形成を認めた.感染性心内膜炎の診断のもと,抗生剤加療を施行した.解熱傾向および炎症所見も若干の改善を認めたが改善が思わしくなかったため入院8日目に手術を施行した.大動脈弁は手術所見では単尖弁であった.交連部を形成し二尖弁として逆流を制御した.僧帽弁には弁瘤の形成を認めたため,切除し自己心膜パッチを用いて形成した.術後経過は良好で術後の心エコー図でも僧帽弁逆流は認めず,大動脈弁の逆流も極わずかであった.重度の大動脈弁逆流を伴う先天性単尖大動脈弁と感染性心内膜炎により僧帽弁瘤を形成した僧帽弁に対して二弁形成術を施行し良好な結果を得たので若干の文献的報告を加え報告する.