日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
2回の右上腕動脈塞栓および左室内血栓を認めた肥大型心筋症(HCM)の1手術例
合志 桂太郎堤 泰史門田 治高橋 洋介木谷 公紀阪本 朋彦大橋 博和
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2010 年 39 巻 3 号 p. 137-140

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抄録
症例は59歳男性.以前より肥大型心筋症(HCM)で近医に通院中であった.突然の右上肢冷感を自覚し近医を受診した.急性動脈閉塞の診断で当院へ救急搬送された.当院で緊急血栓除去術を施行し,良好な右上肢の血流改善が得られた.術翌日よりヘパリンとワーファリンを投与し抗凝固療法を開始したが,術後4日目に行った心臓超音波検査で入院時には認めなかった可動性のある左室内血栓を認め緊急手術を行った.心筋は左心室中隔で非常に肥厚しており,心尖部では菲薄化と瘤状変化を認めた.血栓は径約20×30 mmであった.血栓を除去し,血栓再発予防のために左心室形成術を行った.術後経過は良好で,血栓形成の再発も認めなかった.HCMの経過中に左室瘤の発生を認める症例は散見されるが,血栓を伴い緊急手術を行った症例は非常に稀である.術後経過において現在までも血栓の再発は認めず良好に経過している.
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