2010 年 39 巻 6 号 p. 343-346
症例は75歳,男性.左前下行枝慢性完全閉塞を伴う2枝病変に対して,平成20年2月12日心拍動下に左内胸動脈を左前下行枝へ,大伏在静脈を右冠動脈後下行枝に吻合した.3月6日に心タンポナーデによるショック状態となり,心嚢穿刺術にて回復した.3月29日に再び心タンポナーデによるショック状態となったため,心嚢穿刺術ののち右開胸にて心膜開窓術を施行した.その後4月16日にも心タンポナーデ再発をきたし,心嚢穿刺後に右開胸での心膜開窓術を再度行った.以後心嚢液の再貯留なく退院となったが,6月23日心タンポナーデ再発を来たし,7月2日胸腔-腹腔シャントシステム植え込みを行った.術後経過は良好で,2年経過した現在も心嚢液再発を認めていない.開心術後短期間に心タンポナーデを再発した稀な症例であり,胸腔-腹腔シャントシステムが有用であったので報告する.