抄録
動脈硬化性病変(ASO)のため大腿動脈経由のIABP使用が困難な虚血性心筋症症例に対し冠動脈バイパス術と僧帽弁形成術を行った後,上行大動脈に縫着した人工血管より大動脈内バルーンを挿入した症例を報告する.症例は58歳,男性.15年前より糖尿病性腎症のため透析導入されており,既往歴として,ASOによる左大腿および右下腿切断があった.2年前より僧帽弁逆流(MR)が出現し,今回MRの進行および左主幹部および左前下行枝狭窄を認め,MVPとCABGを施行した.人工心肺離脱時に血行動態不安定であり,IABPを必要とした.ASOのため両側大腿動脈も閉塞していた,上行大動脈に8 mm人工血管を縫着し同部位より大動脈内バルーン挿入を行った.また大動脈内バルーンの通った人工血管を前縦隔に通し,心窩部皮下に人工血管末端を埋没しIABのシャフトを体外に出した状態で皮膚を閉鎖した.術後4日目,局所麻酔下に容易に大動脈内バルーンを抜去した.術後経過は順調であり,本法は四肢末梢動脈からのアプローチ困難な重症動脈硬化性病変を合併した症例の手術時IABP使用に際し,有用な方法であった.