日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
成人期に診断された Ebstein 病に対する Hetzer 法による1手術例
中尾 充貴森田 紀代造黄 義浩阿部 貴行橋本 和弘
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2014 年 43 巻 4 号 p. 195-199

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抄録

症例は28歳女性.8歳のときにWPW症候群を指摘されたが,自覚症状なく経過していた.20歳ころより出現した上室性頻拍を契機に,26歳時にEbstein病と診断された.28歳時に当院にてWPW症候群に対するカテーテルアブレーションを施行し頻拍発作は消失したが,三尖弁閉鎖不全に伴う右心不全遷延にて三尖弁形成術の手術適応となった.心エコー上,三尖弁中隔尖・後尖の高度の落ち込みと右房化右室を認め,Carpentier type Bと診断した.前尖が大きくかつ可動性が良好であったため,Hetzer法による三尖弁形成の方針とした.プレジェット付3-0モノフィラメントで前尖と後尖の交連部近傍の弁輪から冠静脈洞近傍の弁輪にU字縫合を行い前尖後尖弁輪の接合を試みたところ,三尖弁逆流の制御が可能であったため,さらにここより後方の弁輪を縫合閉鎖し,ほぼ弁逆流は消失した.形成後の弁輪径は27 mm,術後三尖弁逆流は極軽度であった.術後経過は良好で,術後のレントゲンでは心胸郭比は48%と心不全徴候を認めず,体重も43 kgから41 kgに減少した.Hetzer法は右房化右室を縫縮せずに,最も可動性のある弁尖(多くの症例で前尖)をmonocuspとして使用し,leaflet-to-septumの弁接合メカニズムにより本来の弁輪レベルで機能再建することで弁逆流を可能にする簡便かつ再現性のある三尖弁形成術であり,またテストスティッチによってその有効性の確認が可能であることから成人Ebstein病において有用な術式であると考えられた.

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