抄録
〔背景〕成人先天性心疾患(ACHD)の増加に伴い,ACHDを有する胸部大動脈瘤症例(TAA)が増加している.当院での10年の症例を検討した.〔対象〕2002年から2011年まで,当科で施行したACHDを有するTAAの15例.〔結果〕男性13名,女性2名,再手術時年齢33.3±10.8歳.先天性心疾患は,TOF 5例,congenital AS 4例,VSD 3例,CoA complex 1例,poly/DORV 1例,poly/corrected TGA 1例.大動脈基部拡大12例,上行大動脈瘤3例,ARの合併を10例に認めた.13例は待機的手術,2例が緊急手術で,II型急性大動脈解離およびKonno patchが離脱した症例であった.術式はBentall手術(+部分弓部置換術)13例,上行大動脈置換+AVR 1例,上行/部分弓部大動脈置換1例であった.手術時間572.8±101.4分,人工心肺時間295.8±100.2分,大動脈遮断時間188.1±58.8分.術後30日以内の死亡は認めなかった.MRSA敗血症による病院死亡を1例に認めたがその他の症例は全例が軽快退院,ICU滞在日数9.4±10.1日,在院日数34.4±18.2日であった.〔結語〕ACHDを有するTAA症例ではTOFが最多であった.ACHDを有するTAA症例の手術成績は良好であった.