日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
再弁置換術を施行した静注薬物常用患者における人工弁感染の1例
田中 睦郎岡本 実
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2014 年 43 巻 5 号 p. 274-278

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抄録
本邦では静注薬物使用による感染性心内膜炎(infective endocarditis ; IE)や人工弁感染(prosthetic valve endocarditis ; PVE)の報告は少ない.われわれは静注薬物使用によるIEのため弁置換術を受け,その後PVEを発症し静注薬物再使用も判明した症例を経験したので報告する.症例は21歳女性.以前,われわれが静注薬物常用者におけるIE症例として報告した患者で2010年11月に僧帽弁置換術,三尖弁形成術が施行されている.術後5カ月目から外来通院を自己中断し,2012年2月に発熱と全身倦怠感を主訴に当院搬送となった.血液培養は陰性であったが,人工弁に疣贅を認め,血液検査では白血球値とCRP値の上昇が認められたためPVEと診断された.また尿中薬物検査は陽性で静注薬物再使用も判明した.抗生剤投与による保存的加療を開始したが疣贅サイズと可動性が増したため入院18日後に手術を施行し,手術は再僧帽弁置換術(生体弁使用),再三尖弁形成術を行った.術後は28日間の抗菌薬投与を行い,32日目に退院となった.現在は当科外来で加療継続し,感染再燃および静注薬物再使用もなく経過している.
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