日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
先天性心疾患の周術期管理における取組み
田中 佑貴宮本 隆司吉竹 修一吉井 剛内藤 裕次
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2015 年 44 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

[背景]:近年,先天性心疾患に対する周術期管理は飛躍的に進歩し,手術成績,生命予後の向上の1つの要因となっている.[目的]:当院で周術期に行っている,①術中経食道心エコー(ITEE)の使用,②心房中隔欠損症(ASD),心室中隔欠損症(VSD),ファロー四徴症(TOF),Glenn手術,Fontan手術における手術室抜管,③ASD,VSDのクリニカルパス導入に関してそれぞれ後方視的にその有用性を検討する.[方法・結果]:2007年6月~2014年6月までの人工心肺使用(On pump)症例482例,非人工心肺使用(Off pump)症例146例を対象とした.On pump 474例,Off pump 102例を適応とし,術中経食道心エコーによる評価を行った.PICU入室直後に遺残病変を認めた症例はなかった.手術室抜管はおもに肺高血圧症(PH)のない症例を対象とし,抜管率はASD 94.7%(54/57),VSD 60.0%(69/115),TOF 50.0%(15/30),Glenn 42.5%(17/40),Fontan 45.2%(14/31)であった.ASD,VSDのクリニカルパスはPHがないもしくは軽度な症例に適応とした.クリニカルパス達成率はASDで98.2%(55/56),VSDで94.2%(65/69)であった.パス逸脱の原因は4例が炎症所見の遷延,1例が家庭の事情であった.[結語]:術中経食道心エコーは人工心肺離脱時の心機能評価,心内遺残空気の評価,遺残病変の確認に有用であった.手術室抜管は安全性を考慮していることもあり抜管率は高くなかった.再挿管の症例はなかったため手術室抜管の適応としては妥当であったと考えられる.ASD, VSDのクリニカルパス達成率は90%を超えており,パスの適応は妥当であったと考えられる.

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