日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
弁輪部高度破壊を伴った僧帽弁位人工弁感染の1手術例
西木 慎太朗郷田 素彦合田 真海鈴木 伸一磯松 幸尚李 相憲沖山 信岩城 秀行井元 清隆益田 宗孝
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2015 年 44 巻 1 号 p. 16-20

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抄録

症例は79歳女性.16年前に感染性心内膜炎のため機械弁(Björk-Shiley弁)による僧帽弁置換術が施行された.2013年3月,40°Cの発熱を認め,前医で人工弁感染と診断された.僧帽弁人工弁周囲逆流による高度心不全のため人工呼吸管理となり,当院に転院搬送された.来院時,WBC 15,700/µl,CRP 7.29 mg/dlと炎症反応の上昇を認めた.また,Hb 8.1 g/dlの貧血,Plt 75,000/µlの血小板減少とBUN 57 mg/dl,Cre 1.8 mg/dl,eGFR 21.5 ml/min/1.73 m2 の腎機能障害も認めた.BNP 456.7 pg/dlと高値であった.前医で採取された血液培養にて連鎖球菌が検出された.当院転院後に施行したCTで小脳梗塞を認めたが,感染と心不全のコントロールが困難であったため緊急手術を施行した.体外循環を開始し,右側左房切開で左房内に達し観察すると,巨大なvegetationが人工弁を覆うように存在した.人工弁は約三分の二周性に外れており弁輪部膿瘍を形成していたため,その部位を可及的に掻破した.欠損した弁輪部は,ウシ心膜パッチを短冊状に切ったものを連続縫合で全周性に縫着して再建し,23 mmのCEP Magna Mitral Ease Heart Valve® をintra-annular positionに縫着した.術後ABPC+GMを投与し,術後47日目にCRPが陰性化,術後56日目に退院した.今回われわれが施行した,ウシ心膜による全周性の弁輪形成は,感染のコントロールと安全な弁置換を可能にする有効な戦略の一つと考えられた.

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