2015 年 44 巻 1 号 p. 37-40
症例は75歳,男性.突然の胸痛のため当院を受診した.造影CT上は明らかな大動脈解離は認めなかった.遠位弓部にPAUが存在し,弓部大動脈周囲には血腫を認めており,われわれは特発性弓部大動脈破裂と診断した.CABGの手術歴および多発性脳梗塞の既往があるため,低体温・循環停止・選択的脳還流の下での開胸手術は侵襲が大きくリスクが高いと考え,debranching TEVARを施行した.術後に小脳梗塞を発症したものの術後29日目に軽快退院した.TEVARは特発性弓部大動脈破裂の有効な治療法の一つであり,文献的考察を加えて報告する.