2015 年 44 巻 4 号 p. 184-187
症例は58歳男性.維持透析中であり,心エコー検査にて偶然僧帽弁に付着する腫瘤を指摘され,手術目的に紹介となった.腫瘤は大きさ約1 cmの球状であり,僧帽弁後尖より発生していた.粘液腫を疑い,右小開胸(MICS)による手術にて後尖の一部とともに腫瘤を切除した.病理組織検査において炎症性偽腫瘍の診断となった.術後1年2カ月の経過観察期間中,再発は認めなかった.炎症性偽腫瘍は,炎症性細胞の浸潤と筋線維芽細胞の増殖を特徴とする腫瘤性病変であるが,多くは小児に発生し部位は肺内が最も多い.心臓原発の炎症性偽腫瘍の報告は少なく,特に僧帽弁より発生したものは,調べ得た限り4例ときわめて稀な症例であったので,文献的考察を加え報告する.