日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
両心補助で救命し得た重症多臓器不全を来たした劇症型心筋炎の1例
景山 聡一郎大橋 壮樹飯田 浩司只腰 雅夫鈴木 晴郎古井 雅人児島 明徳小谷 典子
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2016 年 45 巻 3 号 p. 126-130

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抄録

劇症型心筋炎はPCPSなどの補助循環を導入し,急性期を乗り切る治療が行われるが,さらに重症な場合補助人工心臓が必要となる.今回,術前にPCPS,IABPを装着していたが臓器障害が進んだ劇症型心筋炎に対し,両心補助人工心臓(BiVAD)を装着し,合併症なく救命できた1例を経験したので報告する.症例は46歳男性.熱発で発症し前医に入院となり,発症3日目に突然の胸痛,循環不全からPCPS,IABPが装着された.心機能は著しく低下し,ほぼ無収縮状態となった.内科的治療を一週間続けていたが心機能の回復を認めず,また臓器障害の進行,肺うっ血の増悪,下肢の阻血が出現し,補助人工心臓装着目的に当院に転院となった.入院時血液生化学所見ではT-Bil 6.9 mg/dl,Cre 1.14 mg/dl,BNP 571 pg/dl,血小板3.3万/μlであった.経食道心エコー検査で両心室ともに高度に拡大,無収縮状態であったため,BiVAD装着の方針とした.上行送血,左室脱血で遠心ポンプに装着し左心補助人工心臓(LVAD)とし,肺動脈送血,右房脱血で遠心ポンプを装着し右心補助人工心臓(RVAD)とした.両心補助にて循環も安定しPCPSを離脱した.術後,徐々に心機能,肺うっ血,臓器障害が改善し,特に合併症を認めることなくBiVAD装着12日目に問題なく離脱した.離脱後10日目に抜管,心機能は正常化し,神経症状などの合併症も認めず,51日目に独歩退院となった.

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