日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
腹直筋有茎性胸骨翻転術後に僧帽弁形成術を施行した1例
高橋 大輔椎谷 紀彦山下 克司鷲山 直己坂上 直子山中 憲夏目 佳代子
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2017 年 46 巻 5 号 p. 235-238

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抄録

胸骨翻転術後の心臓手術の報告は少ない.胸骨翻転術後の胸骨正中切開では肋骨-肋軟骨接合部が屈曲したり,術後胸骨翻転部の動揺により胸郭動揺を来し呼吸不全が危惧される.非マルファン症候群の腹直筋有茎性胸骨翻転術後,36年目に僧帽弁形成術を施行した1例を経験したので報告する.58歳,男性.22歳時漏斗胸に対する腹直筋有茎性胸骨翻転術の既往あり.その際右開胸しドレーン留置されている.前尖広範逸脱の重症僧帽弁閉鎖不全症による心不全で手術適応として当科紹介となった.複雑な弁形成術に対応できること,右胸腔の癒着を危惧し手術は胸骨正中切開でのアプローチを選択した.通常どおり切開可能で,胸骨がしっかりしており,また肋骨-肋軟骨接合部の動揺がないことに注意し,通常どおりの開胸器を使用した.心嚢内の癒着は認めなかった.右側左房アプローチで僧帽弁の視野は良好であった.僧帽弁形成術,左房メイズを施行した.胸郭の動揺がないため通常どおり閉胸し手術を終えた.術直後より胸帯を着用したが,同日抜管,胸郭動揺や呼吸不全なく術後16日で軽快退院した.心エコー検査で僧帽弁逆流は制御され,CTで胸骨の治癒に問題を認めなかった.胸骨翻転術が腹直筋有茎性の場合,非マルファン症候群では通常の胸骨正中切開で安全に治療が可能であった.

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