2018 年 47 巻 2 号 p. 66-70
症例は85歳,男性.胸部レントゲンの異常影の精査で施行したCTで弓部大動脈瘤を指摘され当科を紹介された.術前精査で椎骨動脈は左側優位であり金属アレルギー(Pt,Sn,Zn)を有することが判明した.手術では両腋窩/左総頸動脈バイパスを径8 mmのT字型人工血管を用いて作製した.左椎骨動脈は温存する方針としたがこの起始部が比較的近位側であったため,左内胸動脈起始部直前まで遠位にtranspositionし,金属アレルギーのためにコイル塞栓を行わず移植した左椎骨動脈近位で直視下に左鎖骨下動脈を結紮した.つづいて本症例のアレルギー金属を含有せず,さらに含有金属のアレルギー性が低いとされる企業製造ステントグラフト(Conformable GORE® TAG®)でZone 1以遠のTEVARを行った.術後はアレルギー反応を示唆するような特異な所見を認めずに退院し術後2年以上を経過している.金属アレルギーを有する弓部大動脈瘤に対して,コイルを使用せず左椎骨動脈を遠位側にtranspositionしたうえで左鎖骨下動脈を良好な視野で直視下に結紮し,2 debranching TEVARを施行し良好に経過した希少な症例を経験したので報告する.