2018 年 47 巻 3 号 p. 138-141
症例は71歳男性.64歳時にCrawford 3型胸腹部大動脈瘤(TAAA)の診断で胸腹部大動脈置換術を施行した.70歳時にTAAA手術時の島状再建部真性動脈瘤および下行大動脈にpenetrating atherosclerotic ulcer(PAU)を認め,腹部分枝de-branching胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行した.その後,弓部に広範囲胸部大動脈瘤と前回のstent graft中枢端より頭側に形成された真性瘤を認めたため,71歳時にTEVAR治療後frozen elephant trunk(FET)併用全弓部置換術を施行し,合併症なく独歩で退院した.今回われわれは,TAAA手術後に続発する広範囲胸部大動脈瘤を合併した症例に対し,ハイブリッド治療を併用した手術を施行し,良好な結果を得たので報告する.ハイリスクな広範囲大動脈瘤に対し従来の外科手術に加え,TEVARを応用することで低侵襲かつ良好な治療成績があげられる可能性が示唆された.