2018 年 47 巻 5 号 p. 228-234
心停止で発症した心サルコイドーシス症(心サ症)の女性に左室オーバーラッピング手術(LVOL)を行った.特に既往歴なく動脈硬化危険因子の少ない60歳代女性が心停止で発症した.夫によるby-stander CPRで循環が再開した.急性冠症候群を疑われたが冠動脈造影では有意な狭窄なく左室造影で広範囲の奇異性運動領域がみられた.心筋シンチと心臓MRIでは冠動脈の領域に一致しない血流欠損と線維化がみられたことから心サ症を強く疑ったが確定診断には至らなかった.左室瘤があり,心不全と不整脈によると推測される心停止歴があることから左室縮小形成術と植え込み型除細動器(ICD)植え込みの適応と考えられた.LVOL後にICDを植え込み,ステロイドを導入して退院した.術中に採取した左室壁の病理組織所見のHE染色では多核巨細胞を伴う非乾酪性類上皮肉芽腫がみられ,心サ症の確定診断がついた.術後1年半の現在,自宅で心不全の兆候なく通常の生活を送っている.心サ症の病変は限局性のものから広範のものまでスペクトラムは広い.病変の局在と広がりに応じてさまざまな術式が考えられるが,LVOLは1つの選択肢となりうる.