日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
Stanford A 型急性大動脈解離と鑑別困難であった特発性上行大動脈破裂の1例
熊谷 国孝森本 啓介小野 公誉黒田 弘明
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2018 年 47 巻 5 号 p. 243-247

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抄録

症例は77歳,男性.突然の前胸部痛および血圧低下により当院へ搬送された.心臓超音波検査にてバルサルバ洞の拡大を伴う高度大動脈弁逆流および心タンポナーデを認めた.胸部CT検査にて上行大動脈にcrescent signを認めた.術前診断は破裂性Stanford A型急性大動脈解離とし,緊急手術を施行した.術中所見では,血性心嚢液,上行弓部大動脈周囲の血腫および上行大動脈中枢側前壁に2 cm弱の破裂孔を認めた.本症例はバルサルバ洞の拡大を伴う高度大動脈弁逆流も認めたため,人工血管(Jグラフト 28 mm)および人工弁(マグナ EASE 25 mm)を用いて上行大動脈および大動脈基部置換術を施行した.病理組織検査の結果,上行大動脈破裂孔部において大動脈壁全層の断裂および外膜外の血種形成を認め,特発性上行大動脈破裂と診断した.術後経過は良好にて自宅へ独歩退院となった.特発性大動脈破裂は明らかな外傷,大動脈瘤,大動脈解離を伴わない大動脈の破裂とされており,稀で予後不良な疾患であり,外科的治療が必要であるといわれている.今回,術前Stanford A型急性大動脈解離と鑑別困難であった特発性大動脈破裂の1手術例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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