2018 年 47 巻 6 号 p. 276-279
症例は65歳男性.幼少時より心雑音を認め,大動脈閉鎖不全症と診断されていた.今回,動悸,倦怠感を主訴に当院を受診し,大動脈弁逆流III度,上行大動脈最大短径51 mmと拡大を認めた.心臓カテーテル検査では左冠動脈入口は閉塞しており,右冠動脈からの側副血行により逆行性に造影され,入口部に造影剤の貯留を認めた.術中所見では低形成大動脈弁左冠尖が左バルサルバ洞を覆い隠すように大動脈壁に癒合することで,左冠動脈入口部を完全閉塞させていた.低形成大動脈弁左冠尖を切除し,大動脈弁置換術,上行大動脈人工血管置換術を施行し良好な経過を得た.稀少な症例を経験したので報告する.