2018 年 47 巻 6 号 p. 280-283
今回われわれはヘパリン起因性血小板減少症(HIT : Heparin-induced thrombocytopenia)患者に対して左室形成術を施行し,良好な経過をたどった症例を経験したので報告する.症例は67歳男性.拡張型心筋症に伴う心不全で入院した.入院中脳梗塞を発症したためヘパリンを使用したところ血小板減少を認め,HITの診断に至る.心不全はカテコラミン離脱困難であり,左室拡大も急速に進行してきていることから手術の方針とし,左室形成術,僧帽弁形成術を施行した.人工心肺中に血栓症などの合併症は認めず,出血再開胸に至ることなく術後経過は良好であった.術後1年6カ月のフォローでも自宅で心不全症状なく経過している.