Valsalva洞動脈瘤のうち無冠尖から右房に突出するもの(今野・榊原分類IV型)は本邦では非常に稀で破裂した際には圧較差から重篤な心不全を来すとされている.今回今野・榊原分類IV型の破裂にもかかわらず,重篤な心不全とならず待機的に手術を行うことができた2例を経験したので,若干の文献的考察も交えて報告する.症例1:71歳男性.労作時呼吸苦を主訴に近医を受診した.心不全の診断で前医を紹介受診した.前医にて経胸壁心エコーを施行し,Valsalva洞動脈瘤の右房内破裂に伴う心不全の診断となった.精査加療目的に当院へ転院した.内科的加療で心不全が改善傾向となったところで,発症24日に待機的に瘤切除およびパッチ閉鎖術を施行した.術後経過は良好で心不全は速やかに改善した.術後14日に軽快退院となった.症例2:41歳男性.近医にて収縮期雑音を認め,当院内科を紹介受診した.経胸壁心エコーを施行したところValsalva洞動脈瘤を認め右房へのシャント血流を認めた.明らかな心不全兆候はなかったがQp/Qs=2.0,左室拡張末期径の拡大を認めたため手術加療の方針となった.待機的に瘤切除およびパッチ閉鎖術を行った.術後14日に軽快退院となった.