2019 年 48 巻 2 号 p. 128-133
症例は76歳,男性.以前より認めていた胸部下行大動脈瘤,腹部大動脈瘤の増大傾向を認めた.基礎疾患が多く,高リスクと考えられたため,まずは胸部下行大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術を施行したが,高度の動脈石灰化によりtype Ib endoleakを認めた.胸腹移行部瘤は最大径75 mm,腎動脈下腹部大動脈瘤は最大径70 mmに達しており,追加治療を行う方針となったが,高リスクである上に,大動脈弓部から両側外腸骨動脈まで全周性に石灰化が高度のいわゆるporcelain aortaの状態であったため,胸腹部大動脈人工血管置換術や,腸骨動脈からの逆行性の腹部分枝バイパスを用いたハイブリッド手術は施行困難と考えられた.そのため,上行大動脈からの順行性の腹部分枝バイパスおよび胸腹部大動脈ステントグラフト内挿術を施行し,良好な結果を得た.本術式は,胸腹部大動脈人工血管置換術や,腸骨動脈からの腹部分枝バイパスを用いたハイブリッド手術が施行困難な胸腹部にわたる大動脈瘤に対して,有効な術式となり得るが,侵襲も大きく,適応を含めさらなる検討が必要である.