2019 年 48 巻 3 号 p. 193-196
症例は50歳男性.過去3度の慢性膵炎の入院治療の既往があり,径5 cmの膵仮性嚢胞を保存的に加療していた.胸痛精査で冠動脈2枝病変(#5:75%,#2:75%)が指摘され,冠動脈バイパス術(右内胸動脈-左前下行枝,左内胸動脈-鈍縁枝,大伏在静脈-後下行枝)を施行した.術後問題なく経過し,第9病日で退院した.退院から1週間後に全身倦怠感,呼吸苦が出現,心臓超音波検査で心嚢液貯留を認めた.エコー下穿刺にて漿液性心嚢液1,000 mlを排出したが,1週間後には再貯留した.心嚢ドレーンを留置したが,持続的に心嚢液が排出された.そこで膵仮性嚢胞に対して超音波内視鏡下に経胃嚢胞穿刺,ステント留置を行い,膵嚢胞内貯留液を胃に排出したところ,速やかに心嚢液も消失した.本症例における術後の再発性心嚢液貯留は,膵仮性嚢胞との関連が否定できず,若干の文献的考察を踏まえ報告する.