日本心臓血管外科学会雑誌
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ISSN-L : 0285-1474
原著
新生児および乳児期の Ross 手術
—手術成績と Autograft 機能—
高橋 幸宏和田 直樹加部東 直広小森 悠矢雨谷 優吉敷 香菜子安藤 誠
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2019 年 48 巻 5 号 p. 305-312

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抄録

[目的]本邦において,新生児期および乳児期に施行されたRoss手術の報告は少ない.本研究の目的は,1歳未満でRoss手術を施行した大動脈弁疾患症例の転帰を評価し,この時期にRoss手術を選択する妥当性を検討することにある.[対象と方法]対象は,1996年12月から2017年6月に1歳未満でRoss手術を施行した13例(新生児3例),初期主診断名は大動脈弁狭窄症10例,大動脈弁閉鎖不全症3例である.周術期から術後遠隔期の成績と臨床的問題点,Autograft機能と成長の推移,再手術の必要性を後方視的に検討した.[結果]Ross手術時の日齢は中央値166日(9~356),体重は5.7kg(2.8~8.9)であった.うち9例は左心機能の低下,人工呼吸器管理や強心剤の使用から緊急的にRoss手術を施行した.同時手技は,Konno切開による弁輪拡大2例,大動脈弁輪縫縮1例,大動脈縮窄解除3例,僧帽弁縫縮1例であった.大動脈遮断時間は131±29分,体外循環時間178±37分.ECMO管理2例,胸骨二期的閉鎖7例,術後の腹膜透析施行4例.術後の人工呼吸器管理期間は中央値5日,ICU滞在期間は中央値7日であった.術後の観察期間中央値9.9年で全例生存している.身体の成長に伴い,大動脈弁輪径はほぼ正常値の95%予測区間内で推移した.バルサルバ洞径は正常値を超えて拡大する症例を認めたが,新大動脈弁は全例で圧較差20mmHg未満,閉鎖不全は軽度以下で推移し,弁への再手術介入はなかった.冠動脈狭窄1例と大動脈弁下狭窄1例に対し,冠動脈バイパス術と大動脈弁下狭窄解除術を行った.左心系に対する再手術回避率は1年で100%,5年81.5%,10年81.5%であった.また,右心系への再手術は10例で,再手術回避率は1年84.6%,5年29.7%,10年9.9%であった.[結論]新生児期および乳児期に施行されたRoss手術の生命予後は良好で,新大動脈弁の機能は良好に維持された.Ross手術は,新生児期および乳児期に発症する重症大動脈弁疾患に対して有用な一治療戦略と成り得る.

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© 2019 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
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