2019 年 48 巻 5 号 p. 361-364
右側大動脈弓に合併したKommerell憩室に対するハイブリッド手術を経験した.症例は62歳男性で,主訴は息切れと嚥下困難感であった.15歳時に心房中隔欠損閉鎖術の施行歴あり.手術適応のある心室中隔欠損症(VSD)と大動脈閉鎖不全症で当科紹介となった.術前CTで偶発的に右側大動脈弓,異所性左鎖骨下動脈を伴うKommerell憩室を認めた.先にVSD閉鎖術,大動脈弁置換術を施行し,3カ月後にKommerell憩室に対して左総頸動脈-左鎖骨下動脈バイパス,左鎖骨下動脈プラグ塞栓術,右開胸アプローチで下行大動脈置換術を施行した.バイパスと血管内治療を併用することで深部での異所性左鎖骨下動脈の再建を避け,出血や食道・反回神経の損傷なく安全に手術を施行できた.術後経過は良好であった.本症例において当術式は他臓器損傷のリスクを軽減し,確実に瘤の圧排症状をとることができる有効な術式であった.