2019 年 48 巻 6 号 p. 415-418
症例は66歳,男性.中等度大動脈弁閉鎖不全症および遠位弓部大動脈瘤で2005年より外来で経過観察となっていた.徐々に遠位弓部大動脈瘤径が拡大してきたため手術を施行した.術前CT検査では遠位弓部大動脈瘤は最大短径63 mmの紡錘状の瘤であり,左鎖骨下動脈より67 mm末梢まで存在した.術前の計測では末梢のランディング長を30 mmとすると,左鎖骨下動脈中枢部よりOSGを挿入した場合,挿入長を150 mm必要とした.末梢ランディング部の血管径は28.9 mmであり,血管径110%のサイズのOSG (ステント径33 mm,ステント長150 mm) を選択した.また術前の梅毒血清反応でRPR定量5.5 RU,TPLA定量4,670 TUと高値であったが,既往歴に梅毒の治療歴があり梅毒治療後の抗体保有者と判断した.手術は胸骨正中切開で前縦隔に達した後,両腋窩動脈から送血,上下大静脈脱血で体外循環を開始した.大動脈周囲の剥離の際,大動脈は周囲組織との癒着が高度であり動脈壁は大動脈炎症候群様であった.全身冷却中に大動脈弁置換術を行い,25°Cの低体温循環停止下で選択的脳分離体外循環を確立した後に左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で大動脈を離断し,ここよりOSGを大動脈弁レベルの高さまで挿入留置した.上行弓部置換術は4分枝30 mmの人工血管を使用した.病理所見では大動脈壁の栄養血管周囲にリンパ球,形質細胞の浸潤を認め中膜の弾性線維の線維化を認めた.術中,術後病理学的所見より梅毒性大動脈瘤と診断し,術後アモキシリン1,500 mg/日の内服を3カ月間行った.対麻痺や嗄声等の合併症は認めず,術後13日目に退院となった.梅毒性大動脈瘤は臨床上稀であるが,つねに大動脈瘤の原因の1つとして考えておかねばならない.