日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
対麻痺を合併した Stanford A 型急性大動脈解離の1手術例
古川 博史田村 太志本田 威桒田 憲明山澤 隆彦渡部 芳子柚木 靖弘田淵 篤金岡 祐司種本 和雄
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2019 年 48 巻 6 号 p. 419-424

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抄録

症例は76歳,男性.偽腔早期血栓閉塞型Stanford A型急性大動脈解離 (DeBakey II型) の診断で血圧コントロール目的で入院.入院直後の血圧コントロールは不良で背部痛の増悪を認め,再度CT検査を施行したところ大動脈解離の進展を認めた.DeBakey I型へ移行し上行大動脈にULPを有する偽腔および上行大動脈の拡大を認め,緊急で上行弓部部分置換術を施行した.術後両側のTh7レベル以下の感覚障害と弛緩性対麻痺を認めた.体血圧を維持しながらナロキソンを投与し,脊髄ドレナージを施行したが,対麻痺は改善しなかった.胸腹部MRIでは第5胸椎レベルから腰椎レベルにかけて脊髄の異常高信号病変を認め,脊髄梗塞と診断された.術後の胸腹部造影CT検査では下行大動脈以下の後壁側偽腔は血栓閉塞し,肋間動脈に造影効果は認められなかった.対麻痺を合併したStanford A型急性大動脈解離の1手術例を経験し,超急性期の降圧管理の重要性と緊急手術を必要とする大動脈解離に合併した対麻痺治療について考察を加えた.

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