2020 年 49 巻 3 号 p. 106-109
左室心尖部ベント(transapical left ventricular vent ; TLVV)併用の開胸下体外式膜型人工肺(central ECMO)で救命した劇症型心筋炎の1例を報告する.症例は33歳男性.急性両心不全を伴った劇症型心筋炎の診断で当院へ搬送された.人工心肺を使用し,上行大動脈送血,右房脱血,TLVVとして左室心尖部へのカニュレーションを行い,遠心ポンプに接続しcentral ECMOの駆動を開始した.Central ECMO導入後,心機能および臓器障害の改善を認め,術後5日目に抜管,術後7日目にcentral ECMOを離脱した.術後38日目には独歩退院し,社会復帰を果たすことができた.成人劇症型心筋炎に対する補助循環法には,経皮的心肺補助装置(PCPS)が選択されることが一般的であるが,送血による左室後負荷の上昇が,肺うっ血の悪化や,心機能回復の妨げになる可能性がある.一方,TLVVを併用したcentral ECMOは左室後負荷を軽減させる補助循環法であり,著明な肺酸素化障害を伴った劇症型心筋炎の急性期治療に非常に適した治療戦略であると考えられた.