日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
気道閉塞を伴う巨大胸部大動脈瘤に対して大動脈形成術および気管支ステント留置術を施行した1例
前田 基博本田 二郎
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2020 年 49 巻 3 号 p. 123-127

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抄録

症例は62歳女性.急性大動脈解離Stanford Aに対して上行大動脈置換術の既往があるが,その後の通院を自己中断していた.重度の呼吸困難を主訴に救急搬送された.造影CTにて最大短径90 mmの嚢状弓部大動脈瘤が気管および右主気管支を圧排していた.全弓部大動脈置換術の方針で緊急手術となったが,上行大動脈置換術の影響で癒着が非常に強固であり,上行弓部大動脈の剥離が不可能と判断した.低体温循環停止下で弓部大動脈を切開し,大動脈を内腔から観察し嚢状瘤のneckと思われる孔を確認した.血管内腔側から瘤内の血腫を除去した後,同部位を内腔側からパッチ閉鎖した.しかしながらその後も遺残動脈瘤により気道管理に難渋したため,V-V ECMO下に気管支ステント留置術を施行した.気管切開,長期人工呼吸器管理の末,人工呼吸器および酸素療法を離脱し,術後112日目にリハビリ目的で転院となった.胸部大動脈瘤に対する動脈パッチ形成術は,人工血管置換術やステントグラフト内挿術が手技的困難な本症例において救命手術として有効であった.また胸部大動脈瘤による気道狭窄は稀であるが,気管支ステントによる気道確保は海外では報告例があり,本症例でも劇的な気道安定性と無気肺の改善をみせた.

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