2020 年 49 巻 4 号 p. 214-217
ステントレス生体弁も,ステント生体弁と同様に構造的生体弁劣化(SVD)や大動脈基部に破綻を生じ,再手術を要することがある.今回,Freestyle弁による大動脈基部置換術後の生体弁機能不全に対し基部の破綻はないと判断し,leaflet tearによるARに対して弁置換術のみを予定していたが,結果的に大動脈基部置換術を要した症例を経験したので報告する.当院で17年前に大動脈炎症候群による大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対してFreestyle弁を用いて大動脈基部置換術(full-root, Cabrol法)を施行された52歳女性が,心雑音を指摘され,当院へ紹介された.精査の結果,Freestyle弁のSVDによるsevere ARを認め,大動脈弁置換術が予定された.しかし,術中にFreestyle弁の大動脈壁の構造破綻が判明し,基部置換術を要した.初回手術をfull-root法で行った,年月が経ったステントレス弁の再手術では,弁尖と同様に大動脈壁も劣化する.SVDのため大動脈弁置換術を行う際は,術前画像検査で大動脈基部の拡張があれば,大動脈基部置換術を考慮しなければならない.